GEIDAI#3
公式サイト
■トークショー開催。
6月27日(土)ゲスト:十文字香菜子監督、遠山智子監督、西野真伊監督、野原位監督、真利子哲也監督 ほか
東京藝術大学大学院映像研究科
映画専攻第三期生終了制作展
目指す方向のまったく違う5本の作品が、一斉に世に放たれようとしている。5本が5本とも、感動的なまでにバラバラだ。唯一共通なのは、幸福と不幸とが分厚い層のように重なった物語を持ち、丁寧と乱暴とを大きな振幅で繰り返す技術によって撮影され、そして主人公がそれぞれに異なったありようで5人とも狂っているという点だが、それにしても20代後半の若者にこんな重苦しく、頑固で反抗的で、一筋縄ではいかぬ映画をつくることが可能なのだろうか。しかも5通りも。
私はいまでも信じられない。
が、もしこれが彼らの当然の実力だったとしたら、いま日本映画の片隅で何か革命的な変化がおきつつあるのかもしれない。
―映画監督 黒沢清
■上映作品
作品解説―映画監督 筒井武文
『セジと少年合唱団』
HD/71分
監督・脚本:十文字香菜子/撮影監督:青木穣/録音・整音:小西真之/美術:小山宏志/編集:大川景子/音楽:余田有希子/助監督:倉光哲司/製作:真貝陽子
出演:島守杏介、姉帯忠正、中村真生、菅原光樹、藤一平
この一見、心温まるような題材で、十文字香菜子が挑むのは、30年間、別れて暮らした親子の深いわかだかまりが解決可能かという問である。その鍵を握る父親から離婚した母に宛てた手紙の内容は観客に明かされないまま、主人公たる成司は東京から故郷の岩手に送り込まれる。その実行犯は、出版社の同僚であり同棲中の恋人の頼子である。十文字にとっての岩手は、ベルトルッチのパルマがそうであったように、主人公に武装解除させながら、父親の血をひく存在である自己を再認識させる場所である。十文字は、父と母の回想シーンで軽やかに映画と戯れるが、その関係が自身と恋人の関係に横滑りしたときの難しさに直面しもする。のっぴきならない故郷の風景が主人公に迫ってくる瞬間に響いてくるものに勝負が賭けられるが、それを映画の奇蹟と呼ぶべきだろうか。
『よるのくちぶえ』
HD/119分
監督:遠山智子/脚本:澤井香織/製作:五十嵐真志/撮影・照明:八尋宗一朗/録音:上條慎太郎/美術:瀬川烈/助監督:川崎大輔、宮本亮/編集:平田竜馬
出演:泉澤祐希、片岡礼子、品川徹、長谷川朝晴、韓英恵
ご存知の方もいるだろうが、遠山智子は天才である。約十年前に撮った処女作(『集い』)から一貫して、映画文法に捉われない映像の飛躍が持ち味であった。実験映画ならそれで充分だったであろうが、説話性があるだけに、難解との評を呼んだ憾みもある。ところが、彼女はここで少年の成長譚としての大河映画へと足を踏み入れた。母と暮らす15歳のクロシの前に、父が過去の約束を果たしに現れる。代わりに母とは別れねばならない不条理に晒されるクロシ。陰影を強調した画面は遠山独自の世界であり、カットが積み重なる度に驚きは更新される。心理的な説明は排しながら、登場人物の佇まいが染み入るように伝わってくる不思議。彼女に新たに加わったものは、黒沢清をして小津の『晩春』を思わせると言わしめた、少女と母の対話シーンに情感なのである。
『死んだらゲームをすればいい』
HD/108分
監督・脚本:西野真伊/撮影監督:後閑健太/録音:松浦大樹/美術:和泉綾子/助監督:崎田憲一/製作:宮武令衣、本田元治、高橋博紀/編集:徳田津奈子
出演:北村有起哉、木村彩由実、三坂知絵子、玄覺悠子、三谷昇
恐るべき怪作である。これを見たら、作者の頭の中がどうなっているのか知りたくなるのが請け合いである。妻と別居し、幼い一人娘と暮らす専門学校事務員佐々木一郎を北村有起哉が世の中にこれ程幸薄い人はいないだろうと思わせる好演を見せる。同僚の死がきっかけで、娘を連れて媚びた宿に泊まるのだが、そこでふたりの周りに起きる奇妙な出来事の数々。変に悟ったようなトランプ狂の老人(三谷昇!)との出会いに始まり、現世と来世を行き来するような捩くれた時空が漂いだすのだが、それを語る話法もノンシャランに逸脱に逸脱を重ねていく。主人公が悲惨の極地に至ることで、救いも見えてくるのではあるが…。これは、ブニュエルか、つげ義春かと頭を悩ませるのだが、西野真伊は全く他人から影響を受けていないらしい。次回作がみてみたい。
『Elephant Love』
HD/101分
監督:野原位/脚本:高木幹也/撮影・照明:八尋宗一朗/美術:原尚子/録音:松浦大樹/編集:木村恵子/制作:横手三佐子/助監督:本田元治
出演:いしだ壱成、内田亜希子、目黒真希、竹花梓、辻香緒里
ルノワールなら一対三になるところだが、野原くらいでは男を四人の魅力的な女性が取り囲む。内田亜希子と目黒真希の間を往復し、元妻の竹花梓とも友達付き合いする、いしだ壱成ののプライベートを垣間見せるような芝居が絶品だが、初恋の歌姫の登場によって自体は錯綜していく。辻香緒里演じる歌姫登場シーンでは、キャメラまで彼女に欲情しているのが感動的だ。そして壱成に加えられる罪の重さときたら…。ここで(73分40秒)終わっていたら、ロメールに比すべき、コント・モラルの大傑作として充分に観客を唸らせたであろうが、野原は自己の映画的欲望に忠実に、リアリズムから大胆に離脱してみせる。時間が止まったような図書館の館長室が後半への伏線だったのだ。まるで世界の終わりを描くがごとき、その骨太なタッチはとても新人のものとは思えない。必見!
『イエローキッド』
HD/111分
監督・脚本:真利子哲也/撮影監督:青木穣/録音:金地宏晃/美術:和泉綾子/漫画:大脇勇亮、川崎秀和/音楽:鈴木宏志、大口俊輔/編集:平田竜馬/製作:原尭志
出演:遠藤要、岩瀬亮、町田マリー、浪岡一喜、玉井英棋
芸大入学前から充分にキャリアを積み重ねてきた真利子哲也が、自己の総決算として一世一代の大勝負に打って出た作品である。ボクサー志望の田村(遠藤要)と「イエローキッド」を題材に撮った漫画家服部(岩瀬亮)を軸に展開するのだが、一時も眼を離すのを許さない凝縮した持続があまりにも見事である。キャスティングも完璧。二階の自室の窓から芯が剥き出た電線を握り締める田村の姿にはじまり、胸を打つディテールが頻出する。彼を苛める先輩のいるボクシングジムの描写も緻密だし、元世界チャンピオンと同棲する元彼女のアパートに侵入する服部の屈折した心情にも泣けてくる。服部が田村をモデルに「イエローキッド」の続編を描き出し、漫画の世界が同時進行していくポップな魅力も炸裂する。現時点での芸大作品中の最高作といっていいだろう。
■上映スケジュール
6月27日(土) 『セジと少年合唱団』
6月28日(日) 『Elephant Love』
6月29日(月) 『イエローキッド』
6月30日(火) 『死んだらゲームをすればいい』
7月1日(水) 『よるのくちぶえ』
7月2日(木) 『Elephant Love』
7月3日(金) 『イエローキッド』
主催:東京藝術大学大学院映像研究科
共催:NPO法人映像メディア創造機構
製作協力:財団法人角川文化振興財団
設備協力:横浜市、ソニー株式会社、株式会社ナムコ
【入場料金】
800円均一
劇場:ユーロスペース2
期間:2009/06/27-2009/07/03
2010/09
上映時間:21:00→
← 前の月へ
2010.09.01
「
ブラジル映画祭2010
」の情報を追加致しました。
2010.08.26
「
ケンタとジュンとカヨちゃんの国
」の情報を追加致しました。
2010.08.17
「
海炭市叙景
」の情報を追加致しました。
2010.08.16
「
玄牝
」の情報を追加致しました。
2010.08.16
「
ゲゲゲの女房
」の情報を追加致しました。
上映中作品
|
近日公開作品
|
タイムテーブル
|
過去の上映作品
|
劇場案内/会員制度のご紹介
|
通信販売
|
配給作品
|
製作