イスラーム映画祭10
2/20(木)~ 24(月・祝)特集上映
イスラーム映画祭は西アフリカから始まった。
ついに10回目は、サブサハラアフリカ・サヘル地域の映画を小特集。
全世界20億人―。
アジアからアフリカまで、国境、民族、言語を越えて広がるイスラーム文化圏を、映画で旅する5日間。
映画を楽しみながら、世界の多様性を知るために、10回目の「イスラーム映画祭」を開催いたします。
■上映作品
★リズ・アーメッドが見せる移民ルーツの複雑なアイデンティティ★
『モーグル・モーグリ』監督:バッサーム・ターリク ※日本初公開
2020年/イギリス=アメリカ/89分/英語、ウルドゥー語
パキスタン系の英国人俳優でラッパーのリズ・アーメッドが、自身のアイデンティティを投影した作品です。自己免疫疾患で倒れ、ルーツと向き合わざるをえなくなった主人公の混沌とした内面を、独創的に演じています。
★2人の女性の関係に混迷のスーダン史を重ねた良質なドラマ★
『さよなら、ジュリア』監督:ムハンマド・コルドファーニー ※日本初公開
2023年/スーダン=エジプト=ドイツ=フランス=サウジアラビア=スウェーデン/120分/アラビア語
夫の命令で歌手をやめたモナはある日、自分の過失から取り返しのつかない悲劇を招く…。南スーダン独立前を背景に、ある事件を機に出会った北部人のムスリム女性と、南部人のキリスト教徒女性の日々を描いたドラマです。
★非力な犠牲者としか見なされない女性たちをエンパワメント★
『怒れるシーラ』監督:アポリーヌ・トラオレ ※日本初公開
2023年/ブルキナファソ=セネガル=フランス=ドイツ/122分/フラニ語、モシ語、フランス語、英語
フラニの女性シーラとその一族は、キリスト教徒の婚約者家族のもとへ向かう途中、イスラム武装組織に襲撃される…。非道なジハード主義者に家族と尊厳を奪われた遊牧民女性の、生きるための闘いと復讐を描く物語です。
※本作には性暴力を描いたシーンがございます。
★女性讃歌を高らかに謳い上げるアフリカの巨匠の遺作★
『母たちの村』監督:ウスマン・センベーヌ ※19年ぶりのリバイバル
2003年/セネガル=ブルキナファソ=モロッコ=チュニジア=カメルーン=フランス/125分/バンバラ語、フランス語
シレ家の第二夫人コレのもとに、ある日4人の少女が割礼から逃げてくる…。「アフリカ映画の父」と呼ばれた作者が、今もアフリカを中心に世界各地に残る”女性性器切除(FGM / C)”の廃絶を願った、女性たちの物語です。
※本作には暴力的なシーンがございます。
★映画(フェイク)で皮肉るアラブ社会のミソジニー(女性嫌悪)★
『チュニスの切り裂き男(シャッラート)』監督:カウサル・ビン・ハニーヤ ※日本語字幕付初公開
2014年/チュニジア=フランス=UAE=カナダ/90分/アラビア語
独裁政権時代に起き、真相が不明のままになっている女性への切りつけ事件をテーマにした作品です。“疑似”ドキュメンタリーの手法を混ぜながら、革命前から変わらず女性が生きづらい、アラブの男性社会を諷刺しています。
★女性監督が優しい視線で描く、チュニジアのZ世代の価値観★
『イチジクの樹の下で』監督:エリーゲ・セヒリー ※日本初公開
2022年/チュニジア=フランス=スイス=ドイツ=カタール/93分/アラビア語
チュニジア北西部の果樹園を舞台に、老若男女の農業従事者たちの一日を描いた群像劇です。登場人物たちが繰り広げる人間模様から、恋愛、人生、労働、搾取、性差別、世代、信仰をめぐる様々な価値観が浮かび上がります。
★70年代に物議を醸したドイツ移民映画の超問題作★
『シリンの結婚』監督:ヘルマ・ザンダース=ブラームス ※日本初公開
1976年/西ドイツ/121分/ドイツ語、トルコ語
生涯にわたり女性をめぐる問題を撮り続けた作者が、トルコ移民女性の苦難を描いた作品です。劇場公開前にTVドラマとして放送されるや激しい論争を呼び、主演俳優はトルコの愛国主義者から殺害予告さえ受けました。
※本作には性暴力を描いたシーンがございます。
★民族紛争の傷痕を照らす、悲しくも気高い人間ドラマ★
『ハリーマの道』監督:アルセン・アントン・オストイッチ ※日本初公開
2012年/ボスニア・ヘルツェゴビナ=クロアチア=スロベニア=ドイツ=セルビア/97分/ボスニア語、クロアチア語
セルビア人、クロアチア人、ボシュニャク人(ボスニア・ムスリム)の間で交わされた、ボスニア紛争で夫と息子を殺されたムスリム女性の物語です。愛する者を奪われ、心傷ついた人々の癒えない悲しみが丁寧に描かれます。
★エルサレムをムスリム側から描く『パラダイス・ナウ』監督作★
『ラナー、占領下の花嫁』監督:ハーニー・アブー=アスアド ※劇場初公開
2002年/パレスチナ=オランダ=UAE/86分/アラビア語
ある日のエルサレム。ラナーは父親から、自分とエジプトに行くか、4人の候補から夫を選び結婚するかの二択を迫られる…。第2次インティファーダ最中で緊迫する東エルサレムで撮影された、パレスチナ女性の物語です。
★イラン映画の名匠がイラン社会に“色彩”で抵抗した映像詩★
『ギャベ』監督:モフセン・マフマルバフ ※25年ぶりのリバイバル
1996年/イラン=フランス/74分/ペルシャ語
絨毯(ギャベ)を洗う老夫婦の前に、一人の娘が現れる。自らをギャベと名乗る娘は自分の身の上を語り出す…。主にザーグロス山脈の麓に暮らす遊牧民が織るギャベの美しさに、寓話的な恋物語を託したファンタジーです。
★カシミール紛争の“真実”を、カシミール人の目で捉えた物語★
『カシミール 冬の裏側』監督:アーミル・バシール ※日本初公開
2022年/インド=フランス=カタール/99分/ウルドゥー語、カシミール語
ナルギスは消息不明の夫を捜すため、住み込みの家政婦やショール織りをして金を稼いでいたが…。1947年の分離独立以来、印パ対立の要因となっているカシミールの苛酷な現実を、カシミール人監督が描く物語です。
★上映するたびに満席となる、伝説級のパキスタン映画★
『神に誓って』監督:ショエーブ・マンスール ※アンコール
2007年/パキスタン/168分/ウルドゥー語、英語
過激なイスラーム主義者と穏健なムスリムとの軋轢や、欧米に蔓延するイスラーム嫌悪など、3人の若者を主人公に”9.11”以降のイスラーム社会が抱える葛藤を描いた社会派ドラマです。パキスタンで大ヒットしました。
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公式サイト
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公開日
2/20(木)~ 24(月・祝)特集上映
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上映時間
会場:ユーロライブ(ユーロスペース階下・キノハウスビル2階)
2月20日(木) 12:00『ハリーマの道』/14:00『怒れるシーラ』/16:30『さよなら、ジュリア』/18:55『母たちの村』
2月21日(金)10:30『チュニスの切り裂き男』/12:25『イチジクの樹の下で』/14:20『ギャベ』/16:55『カシミール 冬の裏側』/19:00『シリンの結婚』
2月22日(土)10:00『モーグル・モーグリ』/11:50『さよなら、ジュリア』/15:05『母たちの村』/17:30『怒れるシーラ』/20:45『ラナー、占領下の花嫁』
2月23日(日)10:00『シリンの結婚』/12:25『ハリーマの道』/15:25『チュニスの切り裂き男』/18:15『イチジクの樹の下で』/20:10『ギャベ』
2月24日(月・祝)10:00『ラナー、占領下の花嫁』/12:55『カシミール 冬の裏側』/15:55『モーグル・モーグリ』/18:45『神に誓って』 -
入場料金
一般 1,800円/会員・シニア・大学・専門学校生以下 1.300円/障碍(がい)のある方1.000円(付添いお一人様まで適用)
※前売券の販売はございません -
前売券情報
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イベント情報
■トークセッション
2月20日(木) 18:55『母たちの村』上映後
ゲスト:嶺崎寛子さん(成蹊大学文学部 教授)
2月21日(金) 14:20『ギャベ』上映後
ゲスト:村山木乃実さん(日本学術振興会特別研究員PD(東京大学))
2月21日(金) 19:00『シリンの結婚』上映後
ゲスト:渋谷哲也さん(ドイツ映画研究者/日本大学文理学部教授)
2月22日(土) 11:50『さよなら、ジュリア』上映後
ゲスト:丸山大介さん(防衛大学校 准教授)
2月22日(土) 17:30『怒れるシーラ』上映後
ゲスト:岩崎有一さん(ジャーナリスト/アジアプレス)
2月23日(日) 12:25『ハリーマの道』上映後
ゲスト:鈴木健太さん(神田外語大学グローバル・リベラルアーツ学部 准教授)
2月23日(日) 15:25『チュニスの切り裂き男』上映後
ゲスト:佐野光子さん(アラブ映画研究者)
2月24日(月・祝) 10:00『ラナー、占領下の花嫁』上映後
ゲスト:岡真理さん(早稲田大学文学学術院 教授/アラブ文学者)
2月24日(月・祝) 12:55『カシミール 冬の裏側』上映後
ゲスト:拓徹さん(中央大学・政策文化総合研究所 客員研究員)
2月24日(月・祝) 15:55『モーグル・モーグリ』上映後
ゲスト・栗田知宏さん(東京外国語大学南アジア研究センター特定研究員)
2月24日(月・祝) 18:45『神に誓って』上映後
ゲスト:故・麻田豊さん(ウルドゥー語学文学/インド・イスラーム文化研究者)
※第1回イスラーム映画祭2015年12月13日の『神に誓って』上映時にお話しいただいた際の模様を、ご遺族の許諾のもと動画(約35分)にてお送りいたします。